『7.5グラムの奇跡』砥上裕將 感想|失ったら二度と戻らない怖さ

私は視力が悪いので、日頃からメガネやコンタクトを使用しているのですが、もっと慎重に丁寧に目を労ってあげないとな、と感じさせる物語でした。
眼科でお世話になっているお医者さんやスタッフの方のこともよく知れる小説です。
主人公の職業は視能訓練士
視能訓練士って職業知ってますか?
私はこの小説に出会うまで、聞いたこともありませんでした。
視能訓練士とは、視機能を検査したり、視力や視覚機能を訓練によって回復させたりするための専門的な医療技術者のことらしいです。
立派な国家資格のひとつで、患者さんの目の健康を守る視機能のスペシャリスト。
眼科に行くと、診察の前に検査がありますよね。
その検査をしてくれているのが視能訓練士だそうで。
私は、いつも検査してくれている人は看護師さんかな〜なんて思っていたのですが、おそらく視能訓練士さんだったのだと思います。
眼科看護師さんが検査してくれることもあるそうなので、一概には言えませんが。
そんな視能訓練士である野宮恭一がこの物語の主人公です。
眼の疾患は様々
作品に出てくる疾患は、心因性視覚障害、円錐角膜、緑内障、ブドウ膜炎などなど・・・。
特に自分ごととして考えながら読んだのは、円錐角膜の患者さんの話。
円錐角膜でありながら、常用しているカラコンによって角膜が傷ついているために、失明の可能性まで出てきてしまった若い女性の患者さんでした。
彼女は自分の目が嫌いで、自身のアイデンティティーを保つためにカラコンを使っていました。
カラコンがないと、人前に出られない、自信が持てないという彼女。
実際最近のSNSを見ていると、カラコンがない生活なんて考えられないという人が一定数いるように感じます。
私はクリアコンタクトレンズしか使ったことがないので、カラコンで瞳を大きく見せたり色を変えたりするってどんな感覚なのかな〜と気になるところですが・・・。
カラコンを常用している人からすれば、カラコンの使用を禁止されるのって結構辛いことなのかもしれません。
カラコンに限らず、コンタクトレンズは正しく使用し、定期的に検診を受けることが大切です。
私はかなり視力が悪いので、コンタクトをつけるようになってからはこれ以上目を悪くしたくない!と定期的に検診を受けるようにしています。
カラコンは特に、病院でなくても購入できることが多いと聞くので、医師の診断なしで使用し続けている若い人も多いかも。
失明したら元も子もないので、絶対に眼科受診して!と思えるようなお話でした。
瞳を通じて見える人間模様
主人公の野宮恭一は不器用ながらも、純粋な、「誰かの瞳を見つめているのが好き」という理由で視能訓練士になりました。
その設定がよく生かされているなと、作品を読んでいて感じるところが多々ありました。
主人公自身が器用ではないからこそ、実直に患者の瞳を見つめ続け、疾患と向き合う。
そうすると、患者の背景や辿ってきた人生、感情まで見えることがある。
この作品を読むことによって、物理的に見えなくなることの恐怖や、日常の物事をきちんと見て把握しているようで見えていない部分があることに気付かされました。
「みる」って生きていく上で、とても大事なことですね。
著者の過去作より印象に残った
私は砥上裕將さんの過去作『線は、僕を描く』も読んだことがあります。
映画化もされたので、ご存じの方も多いですかね。
水墨画を題材にした物語だったのですが、正直今回紹介した『7.5グラムの奇跡』の方が印象に残り、自分の為になる作品だなと感じました。
朧げに『線は、僕を描く』の内容を覚えてはいますが、なんとなく印象が薄い。
『7.5グラムの奇跡』の方が、より自分に身近で自分ごととして考えながら読んだからでしょうか・・・。
『7.5グラムの奇跡』の続編も
なんと、続編が発売されていました!
どうやら主人公・野宮が少し成長した世界線のお話みたいです。
まだ購入できていないので、手に入ったらまたレビューしたいと思います。
以上、『7.5グラムの奇跡』の感想でした。
気になった方はぜひ。