『いえ』小野寺史宜 感想|リアルな家族関係、友達関係、職場関係


今回紹介するのは、日常を描く作品で定評がある小野寺史宣氏の著書『いえ』。
祥伝社
発売日 : 2022-02-10


心を激しく揺さぶるような物語ではなく、穏やかに読み進められる作品です。

等身大で、リアルな人間描写が心にスッと入ってくる小説を読みたい方におすすめしたい本でした。

『ひと』『まち』から続く物語

今回紹介する『いえ』は、小野寺史宣氏のシリーズ作品のひとつ。

『ひと』は2019年の本屋大賞で第2位になったことがあり、メディアでもかなり取り上げられていたのでご存知の方も多いかもしれません。

私は本屋大賞にノミネートされた当時、『ひと』を購入し、小野寺氏の作品を初めて読むことになりました。

そこからシリーズを順に追っていき、シリーズ外の作品も読むようになりました。

祥伝社
発売日 : 2018-04-11
祥伝社
発売日 : 2019-11-13


『いえ』のあらすじ

主人公は社会人3年目の三上傑。

傑は実家暮らしで、同じ家で暮らす大学生の妹・若緒がいる。

傑の友達であり、若緒の恋人である城山大河が引き起こした事故により、若緒は後遺症で左足を引きずるようになってしまう。

この事故をきっかけに、三上家の歯車が少しずつ合わなくなっていき・・・。

家族に友人、職場でもどう接するべきか悩む傑の日常の物語です。

平凡な主人公

この作品の特徴として挙げられるのが、主人公が本当に平凡で私自分と同じような感覚を持っているところ。

主人公・傑が家族に対して感じること、友人に対して感じること、職場の人に対して感じること・・・。

そのどれもが、よくある善良な主人公の考えそうなことではなく、普通に私たちが一般の生活の中で感じるようなものと一致しているように思います。

まるで本作の物語が、私たちの実生活の延長線上に繰り広げられているかと思うくらい、とても自然で身近でした。

過去作と繋がりがあるのが面白い

本作では、シリーズの過去作に登場してきた人物のその後を追うことができます。

私はシリーズを順に読んでいるので、本作を読んで、「あ、この登場人物は前作の主人公だ!」「この場所も登場するのか!」と発見があって面白かったです。

お話自体は独立しているので、どの順で読んでも面白いですが、ぜひ全部読んでみると良いと思います。

個人的には、『まち』が最も印象に残っていて好きかなぁ。

祥伝社
発売日 : 2019-11-13


また、本作ではシリーズとは関係のない『ホケツ!』という作品も登場します。


随分前にこの作品を読んだことがあったので、こんなところでまた出会えるとは!とかなり胸熱に。

自分の作品をこのような形で登場させることができるのか〜、と初めての体験だったので感心してしまいました。

『ホケツ!』の主人公と、『いえ』の主人公は、どこか似ているようで性格が異なっている点も面白かったです。

シリーズ最新は『うたう』

シリーズ最新は『うたう』という作品です。

これまでの作品は、ひらがな2文字のタイトルでしたが、初めて3文字になりました。

私はまだ読んでいないので、ぜひすぐに読みたいなと思っています。

同シリーズの過去作は、すべてハードカバーで購入しているのですが、装丁も一体感があってとても好みです。

『うたう』では、表紙に女性が描かれているので、これは女性が主人公のお話かな?と予想中。

読むのが楽しみです。

気になった方はぜひ。

祥伝社
発売日 : 2022-02-10



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