『明るい夜に出かけて』佐藤多佳子著 感想|創作する人に刺さる、深夜ラジオの小説

夜に読みたくなる『明るい夜に出かけて』を紹介します。
創作する人にこそ読んでほしい、深夜ラジオの小説です。
- 何かを作っている人に、特におすすめの小説です
- 深夜ラジオが好きな人は、リスナーの世界を楽しめます
- 特に第4章は、創作する人の心に響く章でした
『明るい夜に出かけて』のあらすじ
主人公は富山という大学生。
とある事件を機に休学し実家を離れ、コンビニのアルバイトをしながら一人暮らしをしています。
富山は深夜ラジオリスナーであり、それをきっかけに、ラジオリスナーである少女・佐古田や、バイト仲間で歌い手の鹿沢、旧友の永川と交流を深めることに。
実在するラジオ番組をふんだんに織り込みながらお話が進んでいく、若者たちの物語です。
本作は、平成28年9月に新潮社から刊行され、山本周五郎賞受賞作品でもあります。
オールナイトニッポン50周年を記念したスペシャルラジオドラマ化もされています。
ラジオリスナーの世界が、リアルに描かれている
本作の特徴は、なんといってもリアルなラジオの世界が描かれていること。
実在するラジオ番組がいくつか作中に登場するのですが、中心となるのは2014~2015年に放送された、ニッポン放送『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』(以下、アルピーANN)です。
ラジオ好きな著者が実際に聴いていたラジオ番組で、放送の様子などが色濃く描かれています。
当時、アルピーANNを聴いていた人にとっては、懐かしく、リアルな感覚が蘇ってくるのではないかと思います。
私はアルピーANNを聴いたことがなかったのですが、ラジオは割と好きで、深夜ラジオを聴き流しながら眠る夜もあるので、親近感がありました。
受験生時代などは、オールナイトニッポンを流しで聴くことがありました。
(ちなみに私がよく聞いているラジオ番組は、文化放送「神谷浩史・小野大輔のDear Girl~Stories~」やTBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」など。)
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一般リスナーから見る、ハガキ職人の描き方もリアルでした。
ラジオを聴いていると、この人よく採用されるなぁというラジオネームに出会うことがあります。
笑える投稿が続くと、この人すごいなぁとリスナーの中でも1段上のランクの人みたいな印象があって、面白いんですよね。
文章の紡ぎ方も秀逸だったりして。
どこの誰か知らない人だけど、ラジオ番組を通じてこういう人なんだと認識できるのが、不思議だけど素敵なラジオの世界って感じがします。
クリエイターに刺さる第4章
個人的に1番印象に残ったのは第4章でした。
それまでは、割とゆっくりのんびりした描写が多く、正直読むのをやめようかと思った時もあったのですが、第4章に入った途端、この小説の印象が変わりました。
ネタバレになってしまうのも嫌なので、ぼやっとしか書けないのですが、ものづくりをする人には結構刺さるんじゃないかなと思います。
登場人物が、何かしらを生み出す行為をしている人たちなんですよね。
何かを作るときの初心というか、ものづくりをしようと思う瞬間の気持ちとか、そういうものを思い出させてくれる感覚がありました。
本作では、ラジオ以外にも、ニコニコ生放送やアメーバピグなど、電波やインターネットを通じた交流と、実際に会って現実世界での交流が両方描かれています。
オモテの自分と、プライベートの自分のギャップなんかも生々しく描かれていて、クリエイターのリアルというか、そういうものにも触れている作品でした。
文庫と単行本、どっちを買う?装丁の違い
本を読むときの楽しみって、装丁にもあると思います。
私が今回読んだのは文庫だったので、カバー装画が丹地陽子氏でした。
夜の街に佇む主人公・富山が描かれているのが印象的です。
打って変わって単行本だと、ニッポン放送のスタジオの写真が使われています。
装丁に関するエピソードは文庫版の後書きで読むことができるので、個人的には文庫本の方がおすすめです。
ラジオ好きだと単行本の表紙の方が良いのかなぁ。
こんな人におすすめ
この作品は、
- 創作活動をしている人
- ラジオ好きな人
- 夜型の人
- 起伏が少ないストーリーが好きな人
におすすめです。
大きく心を揺さぶられるというよりは、じんわり心に響いてくる作品と感じました。
夜の静かな時間に部屋のほんのりした灯りをつけて読みたくなるような、深夜の幹線道路沿いの灯りの下で読みたくなるような。
そんな作品でした。
読了後は夜の散歩とかしたくなります。
気になった方はぜひ。
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